今日の桜、どうしょう。
せっかくだからと、
久しぶりに、近所をうろうろした。
郵便局で荷物を送り、
坂道をてくてく上り、パン屋さんまで歩く。
息子たちがチビの時は毎日通った公園もある。
ゆっくり歩いて、消防自動車に乗って、
自転車に乗って、せっせと通った。
パンを買って、久しぶりにコロッケも買った。
帰りは昔の散歩コースを回る。
黒ラブを飼っていたので、毎日散歩に連れて行った。
体重が40キロくらいある肥満犬だった。
あんた、よー肥えて、とか、
まー、おめでた!とか、よく言われた。
夕方、さんぽの「さ」と言っただけで、
いきなりひゃあひゃあ叫びながら、
ゴムまりのような身体を転がしながら庭を走り回った。
なんか悪いもんでも食ったのかと思ったら、
ただ嬉しくてたまらないだけらしい。
可愛いいヤツだった。
そのレミーとうろうろと歩いた場所をまた歩いて帰る。
他所のお花や庭やワンコが楽しみだった。
新しい家が建ち、マンションが建ち、
すっかり変わった場所もある。
桜もたくさん咲いている。
そうだ、もうひとつの公園にも回って帰ろう、と思った瞬間、
大きな家の庭のフェンス越しに、
黒ラブが顔をひょいと出した。
びっくりくりくりくりっくり。
なぜか吠えないで、じっとあたしをガン見している。
まじまじといつまでも見ている。
じーっと見ている黒ラブちゃんに、
振り返り振り返り、
バイバーイと手を振る。
門扉にはフラットコーテッドリトリバーに注意、と書いたプレートが下げられている。
そっか、ラブじゃないんだ。
ほっぺあたりが少しこけた風貌で、
ツヤツヤとしていて、穏やかなとこがレミーに似ていた。
ずっとレミーは近くにいるように思ってきた。
死んで8年くらいたっても。
雨戸を開けると、なぜか背中を向けて待っていた。
リビングをうろうろするあたしを、
いつもじいちゃんちの玄関にうずくまって見ていた。
まだたまに気配がする。
もういいのかな。
前に進めないでいるお母さん。
いつまでもここにいたらダメだ。
もういいから、次に行ってください。
みんな変わってしまっても、
あなたは大丈夫だよ。
そんなことをふいに告げに来てくれたような気がする。
次の公園では春休みの子どもたちがお花見をしていた。
お菓子を食べたり、ジュースを飲んだり。
やっぱり子どもたちはいつも同じだ。
レミーという名前は、
マリオ辞典を見て、子クッパの一員のレミーからもらった。
家族みんなで決めた。
楽しい時間だった。
じいちゃんも元気でにぎやかだった。
想い出はあふれてくる。
うー、レミー。
そろそろお別れした方がいいんだね。
満開の桜の季節に、
あなたはそれを告げに来てくれた。
お母さんは過去にとらわれてばかりではだめだ。
今を生きなくっちゃね。
レミーちゃん、わかった。
桜がきれいだね。
さみしいけど、さようなら。
ありがとう。
さようなら。