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全部覚えているよ。


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八朔の花が咲いた。
清楚なのにすごい香り。
「五月待つ」の季節がやってきた。
毎年同じ話を繰り返して申し訳ないのだけど、
「五月待つ 花橘の香をかげば 昔のひとの袖の香ぞする」の季節である。




貧しい夫婦がいた。
一所懸命がんばったけど、
一緒にいてももううまくはいかないだろう、
と別れることになった。
やがて妻だった女は九州の方の身分の高い男のもとに嫁いで行った。
男は鳴かず飛ばずであったが、
いつしか成功して、それなりの生活ができるようになる。
ある時、仕事で九州に行く。
とある家に招待され尋ねると、
奥から元の妻が出て、
素知らぬふりで歓待してくれた。
もちろん身分の高い男はそのことを知らない。



たまたまだろうが白い花が咲いて、
濃厚な香りが夜に漂っていたのだろう。
その宴の場所で男は、
「五月待つ 花橘の香をかげば 昔のひとの袖の香ぞする」と詠む。
昔のひと、とは、目の前にいる、
今は他人の妻になっている女のことである。



それは単なる袖の香りだけではない。
五月になるのを待って咲く橘とはみかんの原種のこと。
元妻はその花の香りを着物に焚き染めていた。
風呂にも入れない時代、それは一般的なことだった。
着物は夜には二人の夜具にもなる。
橘の匂いは、元妻の匂いであり、
二人の匂いでもあった。
忘れようとしても、五月になるとまた思い出してしまう。
あの日々のことを…。
僕は何もかも覚えているよ、と暗にいっているのだ。




匂いはとてもセクシュアルである。
匂いをかいだとたん、一瞬にしていろいろなことを思い出す。
忘れていたものまで思い出す。
やばい。
やばすぎる。
うっすらと見えるシルエット、吐息、汗、手触り、匂い、いろいろなこと。




それを聞いた元妻は自分の来し方を恥じ入り、
その後、出家してしまう。
別にいいじゃん、
とはあたしは思うけど、
どこか計り知れない想いがあったのだろう。




とにかくあたしはこの和歌が大好きで、
毎年同じ話してすまんです。
清楚なのにタチが悪い。
そんな「五月待つ」の時期がくると、
そこまであたしを覚えてくれているような男はこの世にはいないのだが、
やだーー、といつも追いながら、しみじみする。


匂いはやばい。
匂いは切ない。
動揺してはいけない。
何があってもしれーっと他人事のように笑って、
ひとは生きるしかないのである。






今日は花金であります。
昔の職場仲間とまたイタリアン飲み放題3時間コース行ってきます。
場所は肥後橋。
フェスティバルホールの近くです。
堂島川を眺めながら、オトナはしっとり飲み放題。
楽しんでまいります。




全部覚えているよ。_c0315386_23175574.jpg


JONTEの黄金の顎のライン。
こちらの横顔はやさしげで、
反対側はすごくオトコっぽい。
大好きです。






by haryhareh | 2018-05-11 07:54 | 好きな詩や本のこと | Comments(0)

還暦元年。まだまだ食べざかり、伸びざかり。毎日、すっとんきょうに、真面目に生きてます。日々のこと、好きなこと、JONTEのことなどをだらだらと。アイコンは川島小鳥さんの写真集「明星」。


by haryhareh
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