免許更新に行ってきた。
高台にある警察署から見える生駒山。
この山の向こうが大阪平野。
ジョンちゃんの八尾もある。
スマホで撮るとこんなんやけど、
実際にはもっと近く見える。
奈良側なので、
勝手に裏生駒とあたしは呼んでる。
生駒はかつて、やまとしま、と呼ばれていたのですよ。
やっと地方任期を終えた貴族たちが、
都を目指してみんな帰ってくる。
明石の瀬戸から生駒が見えると、
懐かしさのあまり、
おいおい泣く人も多かったそう。
それにしても、毎度の免許に貼る自分の顔写真のすごいことよ。
げろげろである。
ダンナくんはうれしそうに、
写真は正直よぉー、という。
顔の作りがなんだかなあ、
というのもあり、
おまけに写真写りがなんだかなあ、
というのもあり、
写真は大嫌いなのに、
免許やパスポートの時は、
強制的に顔面写真を提出させられるのに我慢できない。
過去5年使った免許証のあたしは、
なぜかカッパ風。
もしくはカラス天狗風であった。
長年の変な証明写真に辟易していたから、
今度こそ、イケてる写真をと意気込んで、
就活用のいちばん高いヤツで撮ってもらったのに、
出来上がったのは顔がやたら白いカッパ。
マジか…、とうなだれる。
その前に作ったパスポートは、
パスポートセンターの隣でちゃっちゃっと有無を言わせず撮られた写真。
じっくり見ると、なんか牛みたいなのだ。
牛らしさを醸し出しているワシは、
今より10キロくらい肥えていた。
そして、今回、免許更新ですよおー、というお手紙が来て、
今度こそ美しい写りのあたしを撮りませう、
と腰に手をやってリベンジを誓う。
いろいろなひとから、
セルフの証明写真コーナーがすごく良くなってるよ、と聞いたので、
今回はセルフにチャレンジ。
なのにであーる。
5ショットくらい撮って、
いちばんいいのをチョイスすればいいのに、あたしとしたことが、
どれもこれもひしゃげている。
だいたい写真を撮り慣れてない上に、不器用。
どうも目がないので、見開くと、
なんかゴリラのようである。
見開かないと、懐かしきカッパ。
カッパ、ゴリラ、カッパ、ゴリラ、ゴリラ。
仕方ないので、多数決でゴリラに決定。
なんやかんやサービスつけて800円。
安い。
しかし、ふとゴリラじゃあんまりだろう。
来年には還暦になるし、
実はあたしも槇村さとるさんと地曳いく子さんと同じく、
「キャロル」のケイト・ブランシェットか、
由紀さおりさんの路線を目指している。
せめて上品に凛と微笑んでるヤツを、
と、
帰り駅のコインロッカーにあるセルフ機1000円でセカンドチャレンジ。
こちら少し高め。
同じセルフ機でもいろいろある。
こちらはなんか急かされる感じで、
大慌てでやったら、
ケイト・ブランシェットは、
葵の上で踊り狂う、
能面の六条御息所みたいになって、
やたら怖かった。
能面の自分を見つめながら、
今回はゴリラでいくか、と決定。
とにかく写真に撮られるのが苦手で大嫌い。
写真の自分が嫌い。
どうしたら世間をごまかせる証明写真が撮れるのか。
誰か教えてほしい。
ほとんど目をつぶってるし、
つぶらないていようと思うと、
なんかゴリラ系。
自分の顔に自信ないから、
ますます自分の顔がきらいになる。
ジョンちゃんとの2ショットも、
さんざんである。
目をつぶっていたり、
鼻がふくらんでいたり、
顎がたぷたぷしていたり、
小うるさい典型的な関西のおばちゃんになっていたりする。
目をつぶってると、ちゃんとマネージャーさんが撮り直してくださるにしてもだ。
しかし、この時ばかりは、
あたしなりに世界一の幸せもんのように笑ってる。
ジョンちゃんも毎回めっちゃ笑ってる。
満開の笑顔、笑顔。
幸福は比較優位じゃないからさー。
もうそれだけであたしはいい。
たまに画像を見ては、
ジョンちゃんがまとっていた、
ふわふわ気持ちのいい空気を思い出す。
あたしのどんとあぐらをかいてる鼻を見て、
こんな鼻の娘は幸せになれる、
と母の実家の伯母さんがほめてくれた。
熱さと冷たさと霊水で、
身体の悪いとこを直す不思議な施術をするひとだった。
確かにあたしは幸せになったと思う。
この年齢になると、作りより雰囲気だし、
ひとに感じ悪くしないように、
いつもほわほわいるだけでいいと思う。
ゴリラは今回は我慢してやる。
次の免許の更新のあかつきには、
ケイト・ブランシェット風のあたしでいくぜ。
9歳のチビJONTEがきれいだなあと、
見とれたニコール・キッドマンでもいい。
ヤツはどうも背の高い、
死ぬほど気のキツそうな美人が好きらしい。
まっ、それは置いといて、
これからいろいろ研究して、
素晴らしい証明写真と、
お葬式に使うイケてる写真だけはちゃんと準備しとこうと思う。