今日はうちの中の緑に水をやったり、
太陽に当ててやる日。
リビングにはどかんどかん緑があって、
ここ数年はたくさん癒されている。
癒されるということばは安易に使いたくないけど、
癒されるということばしかないくらい、
植物はあたしに優しい。
緑というか植物はもうあかんと思っていても、
ある日急に芽を出して、
元気な葉っぱを広げることもある。
柔らかな芽、柔らかな蕾、柔らかな花びら。
ささくれ立つどこかを穏やかにしてくれるし、
こちらがしんどい時、
かわりに枯れてくれることもあるらしい。
ワシらは、これまでサンセベリアを二つ憤死させた。
ジョンちゃんが引っ越して、
その時にサンセベリアを買ったんだ、
ということでマネして買った。
冬はなんもしなくていいのに、
ダンナくんが水をやりすぎて、
あっというまにずぐずぐになって死んだ。
それも二回も。
あの頃、いろいろあったから、
きっと身代わりになってくれたんだろう。
ありがとうだった。
庭で鉢植えに丁寧に水をやりながら、
なんか甘いむっとする匂いがする。
なんだなんだ、と、見上げると、
白い花が咲いている。
夏みかんの花が咲いている。
今年も咲いたのだ。
五月になるのを待って咲く、
みかんの花の香りを嗅ぐと、
昔愛していたひとの袖に焚き染められていた匂いを思い出す。
そんな和歌を毎年思い出す。
みかんの花の匂いは、
昔の妻の香り、匂い。
目の前にいるのに、遠い。
普段は忘れているのに、
匂いを嗅ぐと思い出してしまう。
あんなことこんなことした夜。
ワシらも若かったのう。
愛おしい時間じゃった。
気持ち良かった。
ありありと覚えとるよ。
好きなひとの香り。
好きなひとを思い起こさせる匂い。
思い出の風の匂い。
車の中の匂い。
何もない、ひんやりとした台所。
恋人がつけていた香水。
何もつけていないときの匂い。
どれもがセクシュアルだったように思う。
もちろん、すべての感覚を駆使して、
ひとは愛し合うべきで、
触覚も視覚も聴覚もそれぞれ大切なんだとは思う。
ただ、無くしてしまったもの、
二度と会うことがないものを、
ふいに思い出させる力が、
匂いにはあるような気がする。
あたしは鼻がデカいせいか、
もともと匂いには敏感なのだけど、
更年期になってからは、
香水は苦手になって、
悪くするとひとの香水で、
吐きそうになったりした。
それが最近マシになったので、
そろそろ更年期は終わるのだろうか。
50代はいろいろあって、忙しかった。
侮るなかれ更年期障害。
最近は、大変だー、大変だー、
といってくれるひとが増えて良かった。
好きな香りも変わり、
身体はもちろん変わり、
どこもかしこも乾いてくる。
あんなにジュワッとして、
すべっすべだったのに、カサカサである。
60代になると、憑きものが落ちたように楽になる、と、上野千鶴子先生もおっしゃっていた。
今年の東大の新入生の皆さんへ、
祝辞を贈られた方である。
息絶え絶えだったのに、
少し少し楽になる。
ゆっくり気持ちのいい流れに乗っている感じ。
これまでは、激しい濁流をひとり無謀にも逆行していた感じかな。
さっき、以前はちちんぷいぷいで、
今はミントになった番組に、
西島秀俊さんが出演されていた。
レモンケーキとマフィンの食べ比べ大会をやっていて、
佐々木蔵之介さんも出てらした。
西島くんは若い時分、
アイドルではなく、
ちゃんとした役者をやりたいとプロダクションを移籍して、
5年くらい民放のドラマに出れなかった。
あすなろ白書の後くらいのこと。
干されていたのだ。
その間はひたすら映画を観て、
プールで泳いでいたという。
いいこともそうでないこともある。
無駄なことなどいっさいないのだろう。
なんせ、あの細マッチョの筋肉。
八重の桜である。
京都の薩摩藩邸跡を、
同志社に譲った山本覚馬さまを演じてらした。
CMに移るとき、
突然、西島くんが、きゅっきゅっと、
子どもみたいに手を振った、
あたしに。
それがあまりに可愛いかった。
きゃーー。
あたし、次、結婚するなら、
やっぱ西島くんがいいな。
なんちって。
いうのは自由。
イケメンって、ほんとに目の保養。
いいですわよね。